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■3640 / 親投稿) |
下顎前歯横方向異常傾斜の質問
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□投稿者/ 井上 -(2009/11/07(Sat) 16:31:50)
| 下顎前歯横方向異常傾斜の質問
晝間先生 貴質問コーナーにて下記の質問をいたします。よろしくお願いします。
他医院で行なっていた矯正治療が長期にわたって終了しないのでレントゲン 写真を取り寄せたところ治療前はほぼ垂直であった前歯群が非対称で右犬歯 の方が左犬歯に比べて傾きが大きく、後退し、右2、右1、左1までもが右側 に傾斜していたことがわかりました。 (電子メールにて矯正装置装着前、及び、装着約4年半後のレントゲン写真を 送付しますのでその映像参照ください。) その後も矯正装置が長期間にわたって外せない状態になりました。
前歯は前方から見た場合に歯根のほぼ上に歯冠が来るのが自然の歯並びだと 考えますが、レントゲン写真では右2の歯根には右2の歯冠の端さえ来て おらず、右2の歯根の真上には右1の歯冠が来ており、右1の歯根の上に 左1の歯冠が来ています。
1)まともな矯正を逸脱した状態と考えますが先生の見解をお聞かせ下さい。 (この傾斜状態をいつまで保っても直せないのではないでしょうか?)
2)このままの状態で毎回食事等をし続けていれば歯根は劣化するのでは ないかと考えますが先生の見解をお伝えください。
尚、矯正治療開始の際に4カ月の間に医師は下記理由により次の8本の歯を 抜歯しています。
a) 純粋に矯正治療のため抜歯したもの小臼歯4本: 上顎左上4番、上顎右上4番、下顎左下5番、下顎右下4番(下顎非対称抜歯)
b) 歯根崩落、クラウン適合不良、歯槽骨不良のため抜歯したもの大臼歯4本: 上顎左上6番、上顎右上6番、下顎左下6番、下顎右下6番
何卒宜しくコメントのほどお願い申し上げます。
敬具
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▽[全レス9件(ResNo.5-9 表示)]
■3646 / ResNo.5) |
Re[5]: 下顎前歯横方向異常傾斜の質問
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□投稿者/ 晝間康明@ひるま矯正歯科 -(2009/11/11(Wed) 19:14:21) http://www.hiruma.or.jp/
| こんにちは,晝間康明@ひるま矯正歯科です. 回答に対する当院の立場を御理解頂きありがとうございます. また,お急ぎの所,返信が遅れてしまい申し訳ありません.
では,一般的な見解である事を前提に回答致します.
質問1 回答:御指摘の通り,歯の移動の原則は歯体移動です.歯体移動が出来れば傾斜移動を行なう事は簡単ですが,傾斜移動しか出来ないと歯体移動が出来ないからです.これはかつての矯正治療が傾斜移動しか出来ず歯軸のコントロールが不十分で歯が傾斜し,咬合平面が歪み咬合が不安定になった症例があったからです.
質問2 回答:となりの前歯の歯根と重なるくらいの傾斜と言う事でしょうか?いただいパノラマX線写真ではそこまでの傾斜と思えませんでしたが,となりの前歯の歯根と重なるくらいの傾斜させた症例は経験した事がありません.また,そこまで傾斜させなければならない治療方針は,無理のある治療方針と言えそうです.
質問3 回答:上顎に対して下顎が偏位している(横にズレている)場合はわざと歯を傾斜させて仕上げる事があります.また,抜歯部位を非対称にすると歯軸は非対称になりやすいのでより傾斜移動に対する配慮が必要になります.
質問4 回答:矯正治療により歯並びが綺麗に並んだ事で清掃性は高くなるので,初診の時より清掃性が低くなるとは言えないと思います.しかし,歯軸が傾斜せずに綺麗に並んだ歯列に比べると清掃性は低くなり,歯周病のコントロールは難しいと予想します.
質問5 回答:裏側矯正では,装置とワイヤーが直視できない状態でコントロールしなければなりません.また,手や器具が入り辛いためワイヤーとブラケットの結紮が緩くなりやすく,さらにスロットサイズに対してフルサイズのワイヤーを装着できない,ブラケットブラケットの距離が近接するので太いワイヤーを装着できず細いワイヤーでコントロールするので傾斜移動になりやくすくなります.舌側矯正の治療で精密度が低下するのはこの様な特徴があるからです.
質問6 回答:米国で非抜歯矯正が主流とは聞いておりません.また,日本人は欧米人に比べて前歯の唇側傾斜が強く,叢生(歯の乱ぐい)が強い事は様々な研究で報告されているので,日本人の矯正治療において抜歯による矯正治療が多いと言う事は,矯正歯科医の間でコンセンサスが得られているものと考えます.抜歯の順序に関しては,症例によってそれぞれでしょう.症例によっては,最初から8本抜く場合もあると思いますが,当院では8本の抜歯が必要な症例でもまずは小臼歯の抜歯をして患者さんに矯正治療に慣れてもらってから予定の抜歯を追加するようにしています,しかし,そうしなければならないとは思っておりませんので,患者さんと歯科医師の間で相談して決める事でしょう.
質問7 回答:歯と歯の間にスペースが無くなってしまって治療方針変更が必要になった場合の一般的な対応方法を記載します.
1.スペースを確保するために大臼歯の遠心移動を行なう 一般的にスペースが無くなってしまい方針が変更になる原因はアンカーロス(歯の移動時に固定源が喪失する)による大臼歯の近心移動によるものが多いため,再度大臼歯を元の位置に戻す(遠心に移動)してスペースを確保します.しかし,歯は生理的に近心に移動するので遠心移動は困難な場合が多く,ヘッドギア,インプラントアンカー,顎間ゴムと言った固定源を確保する付加的な装置が必要となる場合が多くなります.
2.大臼歯の移動をするスペースがない場合 1)追加の抜歯をする: スペースがない場合は追加の抜歯をしてスペースを確保する場合があります.しかしこの様な治療方針の変更は抜歯か非抜歯かで苦慮し,非抜歯で治療した症例を抜歯症例に切り替える場合によく用いる考え方です.本症例では,既に8本抜歯している状態ですので安易に追加の抜歯を選択する事はできない状況でしょう. 2)外科手術による顎の移動: 抜歯も出来ず,歯の移動するスペースがない場合は外科手術による顎の移動を行ない,上下顎の位置関係を変えて咬合状態を改善します(外科矯正).一般的には,初診時から外科矯正を行なえば保険の適応となりますが,同じ病院で治療方針が外科矯正へ変更ととなると混合診療となる恐れがありますので保険がで起用されない可能性がありますので費用について充分理解されてから方針を変更する必要があります.外科矯正では,顎の移動に伴い顔貌の変化が伴う事から顔貌を変化させたくないもしく変化させない方が良い症例では該当しない場合もあります.
以上,参考になれば幸いです.
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■3647 / ResNo.6) |
Re[6]: 下顎前歯横方向異常傾斜の質問
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□投稿者/ 井上 -(2009/11/13(Fri) 23:32:08)
| 晝間先生 丁寧なご説明ありがとうございます。 一般的な見解であっても専門的な指摘をいただき大変感謝しています。
確認のため下記の点を質問します。
質問1: レントゲン写真のように歯と歯の間にスペースが無くなってしまい、 依然、前歯が傾斜している場合は、このままの状態でワイヤ微調整 を続けていても根本的な解決は望めないため、大臼歯の遠心移動を 行うか、既に8本抜歯を行っているため外科手術をしないと本来的 な対策は困難と考えて良いでしょうか?
質問2: 治療にあたった医師からは動的期間に約10年要したと説明が ありましたが8本抜歯の場合どれくらいで動的期間が終了する のが一般的でしょうか?
質問3: 前歯は前歯から見た場合、「V」字形をしていて、歯根が歯冠の 両端の中間域にありますが、矯正により意図的に歯根が歯冠の 片方の端よりはみ出す形、(「レ」の文字か、それよりさらに 斜めにしたような形)に配置することはあるのでしょうか? (レントゲン拡大参照願います。)
いつも専門的で良心的な御説明感謝しています。 何卒宜しくお願い申し上げます。
敬具
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■3648 / ResNo.7) |
Re[6]: 下顎前歯横方向異常傾斜の質問
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□投稿者/ 晝間康明@ひるま矯正歯科 -(2009/11/14(Sat) 12:05:07) http://www.hiruma.or.jp
| こんにちは、晝間康明@ひるま矯正歯科です.
追加のご質問にお答えします.
質問J 回答:実際の口腔内を拝見した訳ではないので何とも言えませんが,上下歯列のズレが大きい場合は大臼歯の遠心移動や外科手術が必要になるかもしれません.ズレが小さい場合は、歯に接着するブラケットのポジションを変え,ワイヤーをフルサイズ(ブラケットスロットと同じサイズのワイヤー)でトルクまでしっかりとコントロールることで対応できる場合もあります.
質問2 回答:通常の小臼歯を4本抜歯する症例の治療期間は2年間から2年6ヶ月ですが、治療開始時年齢が高ければより治療期間がより長くなる可能性があります.そしてこの期間に加えて、上下顎の第1大臼歯を抜歯した場合はJ〜3年間ぐらい治療期間が長くなると思いますが、上下顎第1大臼歯を抜歯症例がそもそも少なく正確に集計した訳ではありません.また,裏側矯正は通常の矯正治療より歯の動きが悪い場合が多く,治療期間はより長くなります.従って通常の表側矯正治療であれば、動的治療期間は長くても5〜6年が妥当かと思います.本症例では,表側矯正でも期間のかかる治療を裏側矯正で行ったことでより期間がかかってしまったのではないかと感じます.
質問3 前歯は前歯から見た場合、「V」字形をしていて、歯根が歯冠の > 両端の中間域にありますが、矯正により意図的に歯根が歯冠の > 片方の端よりはみ出す形、(「レ」の文字か、それよりさらに > 斜めにしたような形)に配置することはあるのでしょうか? > (レントゲン拡大参照願います。) 回答:前歯とは専門的に上下顎の犬歯から犬歯を呼びますが,どの前歯についてのご質問でしょうか?レントゲンを見て傾斜の強いものは下顎の中切歯が右側に傾斜している様に感じます.上顎の中切歯歯根間にはV字型の隙はありますが解剖学的な歯冠形態によるものと感じます. 矯正治療では基本的に、歯根と歯根はできるだけ平行に並べます。これは、歯と歯が近接すると歯と歯の間の歯槽骨がなくなってしまったり、歯周病が発生すると隣接する歯にも影響を与えると考えられているからです.しかし、実際の臨床では歯根が湾曲してたり,x線写真の写り方によっては傾斜していなくても傾斜しているように見えてしまう場合もあるので,正確に判断するには多角的に観察する必要があります.
以上,参考になれば幸いです.
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■3649 / ResNo.8) |
Re[7]: 下顎前歯横方向異常傾斜の質問
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□投稿者/ 井上 -(2009/11/15(Sun) 21:10:41)
| 晝間先生 いつもわかりやすい説明ありがとうございます。 確認のため下記の質問をします。
質問1: 第1大臼歯の抜歯例が少ない理由は何故でしょうか?
質問2: 歯の状態の写真を送付させていただきます。 右1と右2のワイヤの長さが、右2と右3のワイヤの長さの 二分の一以下ですが,このような状態を維持して右2の歯の 垂直性は保たれるのでしょうか?
ご見解宜しくお願いいたします。 敬具 井上
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■3650 / ResNo.9) |
Re[8]: 下顎前歯横方向異常傾斜の質問
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□投稿者/ 晝間康明@ひるま矯正歯科 -(2009/11/16(Mon) 09:00:44) http://www.hiruma.or.jp/
| こんにちは.晝間康明@ひるま矯正歯科です. 下顎の口腔内写真をお送り頂きありがとうございます. 写真を拝見致しましたので,回答させて頂きます.
> 質問1: 第1大臼歯の抜歯例が少ない理由は何故でしょうか? 回答: 大臼歯は,噛む力を最も負担する歯であり,中でも第1大臼歯は歯冠が大きく,歯根も長く負担する割合が大きいため咬合の鍵となる歯です.したがって,矯正治療で大臼歯の抜歯が必要となった場合でも,第1大臼歯の抜歯はできるだけ避けます.しかし,本症例のようにう蝕が進行していて長期的な予後が望めない場合は,第1大臼歯の抜歯もやむを得ないと考えます.
> 質問2: 歯の状態の写真を送付させていただきます。 > 右1と右2のワイヤの長さが、右2と右3のワイヤの長さの > 二分の一以下ですが,このような状態を維持して右2の歯の > 垂直性は保たれるのでしょうか? 回答:写真を拝見させていただくと,下顎右側2番1番が近接し捻転しています.このために同側3番と2番のブラケット間のワイヤーの長さに比べて2番と1番の方が短くなっています.これは,下顎前歯部に歯を並べるためのスペースが不足している事が原因ですので,下顎前歯を唇側に傾斜させる,大臼歯を遠心に移動させる,犬歯間幅径を拡げる(頬側に拡げる),歯を削り歯を小さくするなどの方法で不足しているスペースを確保する対応が必要でしょう.しかし,これらの対応をした事で上顎歯列ときちんと咬合が出来なくなる可能性があるため,下顎の対応方法に合わせて上顎歯列にも対応が必要となる可能性がありますが,上下顎骨の位置関係が不明であるため何とも言えません.また,上下顎歯列を対応させたくても骨格的な問題や歯周組織の問題により対応できない場合もありえます.正確な対応は,きちんとした矯正歯科的な検査や分析が必要な事を御理解下さい.
以上,参考になれば幸いです.
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