| 2006/08/19(Sat) 17:26:36 編集(投稿者)
まず、分かりやすく前歯の歯軸で考えてみましょう。テレビや街行く人の口元をみると、歯の傾斜が様々であることが分かります。上の前歯が前傾し過ぎていれば出っ歯(不正咬合)でしょうし、内側(舌側)に向き過ぎていれば、それはまたそれで不自然です。 しかし、正常といわれる咬み合わせの人でも、すべて同じ歯軸(傾斜角)ではなく、あるレンジ(範囲)内でそれなりに傾斜していますが、それで機能的にも形態的にも正常な状態であるわけです。それは奥歯(大臼歯)でも同じです。 歯軸は、歯とその対咬歯を含む周囲組織との関係で成り立ちますので、良い歯軸を説明するのは複雑で難しいのですが、強いていえば、歯を囲む骨(歯槽骨)に対して無理のない、安定した位置(歯軸)で植立していることは大切な要素です。
奥歯の歯軸に対する二つの意見は異なる学派の主張であって、学会でも今の時点でどちらが正しくどちらが誤っているかを、学術的に判定するには至っていないようです。ただ、これまでの数多くの研究者による正常咬合者に対する人種計測学的な統計からいえば、奥歯(大臼歯)は若干舌側に傾斜しているものです。 実は、<奥歯の歯軸はなるべく垂直に立てた方がよい>という意見は、それが大臼歯の正しい歯軸であるという意味ではなく(学派の人はそれが正しいと主張はしますが)、非抜歯で矯正するための歯列の拡大のための論拠として、そう唱えているわけで、時にはそれが方便となり深刻な問題を起こしていることは、この質問コーナーでもよく聞きます。 たとえば、最近の下記2例はその典型です。 http://www.hiruma.or.jp/cgi-bin/treebbs/cbbs.cgi?mode=all&namber=2239&type=0&space=0&no=0 http://www.hiruma.or.jp/cgi-bin/treebbs/cbbs.cgi?mode=all&namber=2230&type=0&space=0&no=0 この投稿者の一人は実際に口の中を拝見しましたが、この方を含めてお二人には、抜歯による再矯正しかないことを伝えました。 ムーさんのご質問である<正しくない方の場合、どういった弊害が>については、奥歯の歯軸の傾斜そのものの弊害というより、それを論拠に無理な非抜歯矯正が行われるとしたら、それが最大の弊害といえるのであって、諸々の条件から大臼歯の歯軸が垂直気味になるとしても、前歯の歯軸が正常内でも色々あるように、歯槽骨内で無理なく安定した咬合が確立できていれば、別に問題はないものです。
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