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感染防止策について

インタビュー:OPひるま歯科矯正歯科 院長・晝間康明 2020.4.14
(聞き手:ひるまだより編集部)

以前より感染防止策には特に力を注いでいるOPひるま歯科 矯正歯科。新型コロナウイルス感染の拡大で、感染防止策が注目される今、通常の感染防止策と、新たに加えた対策について、晝間康明院長にお話を伺いました。

歯科医院では、どのようなときに感染のリスクがありますか。

感染とは、細菌やウイルスが伝播するということを言いますが、まず、一つ目の感染リスクは、歯科医師や歯科衛生士など医療従事者が患者さんを治療するときにあります。治療に使用する器具や医療従事者の手指には患者さんの唾液や血液などの体液が付着します。例えばAさんに使用した治療器具をBさんにも使用したらAさんの細菌がBさんにうつる可能性があります。

二つ目は、患者さんから医療従事者への感染リスクです。例えば注射器などは注射したあと、針にキャップをするんですね。その時に誤って指を刺してしまうという事故があります。また、歯石除去の器具など鋭利なものがあり、同様の事故が起こってしまう可能性があります。患者さんが保菌者であった場合、感染が起こる可能性があります。

大事なことは、医療従事者から患者さんに感染させないこと、患者さんから医療従事者が感染しないこと。医療従事者が感染の受け渡し役になってしまうことは、徹底的に防がないといけないと考えています。

OPひるま歯科 矯正歯科での感染防止策を教えてください。

従来医療の世界では、感染物質を伝播するのは「血液」で、血液に由来した感染を予防するユニバーサルプレコーションと呼ばれる予防策が一般的でした。しかし現在では、血液だけでなく、「汗を除く体液」が感染物質を伝播するとされており、それらの予防策、スタンダードプレコーションが主流で、当院でも採用しています。

当院の感染防止策については、もともと私が2008年に歯科先進国であるスウェーデンに研修に行った際、学んできたことを採り入れています。スウェーデンでは消毒室、滅菌室が独立しています。これは器具の消毒や滅菌を徹底するには本当に必要なことで、当院でも当地へ移転した際にそのような設計にし、不潔ゾーンと清潔ゾーンを完全に分けることができています。消毒室、滅菌室には自動ドアが完備されていて、ドアノブを触る必要がありません。使用済みの器具はすべてここへ運び、消毒し滅菌しています。また、治療室も隣の患者さんに細菌がうつるのを防ぐため、全室個室になっています。


手前が消毒室、自動ドアの奥が滅菌室

消毒、滅菌の方法を教えてください。

治療で使用した器具の消毒、滅菌方法は次の通りです。


使用済みの器具が集められます

洗浄

超音波洗浄機を使用。超音波で目に見えない気泡を発生させ、気泡が弾ける衝撃波で表面に着いた汚れをはがします。手では落とせない細部の汚れを落とすことができます。

洗浄、消毒

器具除染用洗浄機(ミーレジェットウォッシャー)を使用。高圧洗浄により、複雑な構造の器具も徹底的に洗浄し、素手で触れても安全なレベルまでの消毒を行います。


使用済みの器具を洗浄器に入れて、洗浄、消毒します

滅菌

高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)を使用。高圧の飽和蒸気の持つ気化熱を微生物に作用させることにより、微生物を形作っているタンパク質を変形させ、すべての細菌・ウイルスを死滅させることができます。ただし、器具によっては蒸気滅菌器では錆びるものがあります。それらにはフタラール溶液という強力な消毒液を使用しています。


オートクレーブで滅菌します

滅菌

タービン専用滅菌器(DACユニバーサル)を使用。タービンという歯を削る器具の洗浄や滅菌を行います。タービンは、実際に口の中に触れているのは先端部分だけですが、圧縮空気の力で回転するため、汚れや細菌を器具内部に吸い込んでしまいます。そのため内部まで洗浄して滅菌することが必要なのです。


タービンはDACユニバーサルで滅菌します

当院では治療器具は半日以上の患者さんに対応できる数を揃え、超音波洗浄機9台、滅菌器4台を完備し、半日ごとに洗浄および滅菌を行っています。滅菌した器具は紫外線殺菌棚または滅菌パックで保管しています。


紫外線殺菌棚


滅菌パック

今回の新型コロナウイルス感染防止策として行っていることを教えてください。

これまでは医療従事者から患者さんに細菌やウイルスを感染させない対策を中心にとってきました。しかし、新型コロナウイルス感染症はエアロゾル感染、つまり空気中を長く浮遊したウイルスを吸入した人が感染すると言われています。患者さんから医療従事者への感染予防を徹底することが必要になります。そこで、今回の対策として、医療従事者、患者さんとも体温の確認を徹底し診療前の口腔内消毒、診療室と待合室の換気を行い、診療ごとのユニット消毒、午前午後でのユニフォーム交換、ゴーグルの装着、アクセサリーなどウイルス付着の可能性があるものの除去などを徹底することとしました。使い捨てのグローブやマスクの使用などは以前から行っていますが、皆さんもご存じのとおり入手が困難になっていて、予約購入している状況ですが、金額が通常時の約10倍です。今後も感染防止策に手を抜くことは一切しませんが、厳しい状況であることは間違いありません。

患者さんにメッセージをお願いします。

細菌やウイルスの感染というのは、まずどういう経路で起こるものかを理解する必要があります。感染性病原体があったとして、保菌者や治療用器具が体液や飛沫物に触れたときに伝播します。それは直接的であったり、道具を介したりして、目や粘膜から入ってきます。ただ、それだけ揃っても必ず感染するかというとそうではなくて、具合が悪い人や健康状態が低下している人は罹りやすくなります。

これらをどこで断ち切るか。例えば手指の洗浄を徹底する、治療器具を滅菌する、飛沫物を受け取らないよう個室で診療する、マスクやゴーグルで入口を封鎖する、毎日の健康に気をつけ、免疫力の向上を図るなど、どこかで流れを断ち切ることができれば、感染は防ぐことができます。当院では通常時でも最大限の感染防止策を行ってきました。今後もその方針に変わりはなく、さらに状況に応じた対策を講じていき、皆さまの不安を少しでも軽減できればと思います。