HOME >  医院案内 >  症例紹介 >  症例紹介6/Oさん「中立咬合、叢生、両突、右側偏位顎」

症例紹介6/Oさん「中立咬合、叢生、両突、右側偏位顎」

BACK

Oさん「治療は痛みとの戦い! でも仕上がりに満足」

初診時の診断:「中立咬合、叢生、両突、右側偏位顎」

初診時の診断:「中立咬合、両突歯列、叢生歯列」

現症

Oさんはデコボコの歯並びが笑った時に気になることを主訴として矯正治療を希望されました。
検査の結果、上下顎骨の位置関係に大きなズレは認めないものの顎骨に対して歯が大きすぎることで歯が並びきらずにデコボコになっている叢生であることが分かりました。また、叢生に伴い犬歯が頬側に転位し前歯は唇側に傾斜しているため、口唇閉鎖時の口唇周囲軟組織に軽度の緊張感と突出感を認めました。また上顎左側側切歯は反対咬合になっているので噛み合せも不安定な状態でした。初診時24歳。

むし歯と歯周病の検査結果では、歯の磨き残しが多く、むし歯菌は多く存在し、歯肉炎による歯肉の退縮や歯肉からの出血が広い範囲に認められ叢生を放置することで口腔内の環境はより悪化することが予想されました。また、噛み合せが不安定で良く噛めないことから唾液の分泌量を減少させている可能性も考えられました。

初診時口腔内
初診時口腔内
歯の磨き残しにより歯肉が腫れて出血している

初期治療後
初期治療後
初期治療により歯肉の腫れが引き、歯肉からのの出血が減少

診断

軽度慢性歯周炎を伴う中立咬合、両突歯列、叢生歯列と診断しました。
治療計画は、矯正治療を開始する前の初期治療(プロフェッショナルケア)として全顎的な歯石の除去、専用器械による歯のクリーニング(PMTC)、家庭での口腔衛生指導(ホームケア)としてブラッシング指導、フッ素使用の習慣化の指導をおこなうこととしました。矯正治療は初期治療後に上下顎左右第1小臼歯及び第3大臼歯(親知らず)の抜歯によりスペースを確保し、叢生の改善と前歯の後退をおこなうこと、動的治療期間は30ヵ月と予想しました。慢性歯周炎を伴うため矯正治療後にブラックトライアングルが現われる可能性を説明し、予測模型でブラックトライアングルの状態を作成して確認していただいてから矯正治療を開始しました。また、充分な初期治療をおこなったとしても矯正治療開始後もメインテナンスを継続しなければむし歯と歯周病のリスクが高まるので毎回の調整時にワイヤー外して歯肉縁下、縁上のバイオフィルムを除去するメインテナンス(クリーニング)とフッ素洗口をおこないました。

予測模型によるブラックトライアングルの説明
予測模型によるブラックトライアングル

治療結果

上顎前歯のサイズが僅かに非対称だったことから上下歯列の正中は完全に一致しませんでしたが奥歯(臼歯)はほぼ左右対称の咬合で安定しました。動的治療期間は29ヵ月で予測よりも短い期間で終了することができましたが、Oさんはお仕事やご家庭の事情で4週に1度の来院は困難であり実際の調整回数は25回であったことから予想よりも効率良く治療が進んだと考えています。ブラックトライアングルは予想通り現われてしまいましたが歯肉は引き締まり健康な状態で安定しました。

動的治療後に現われたブラックトライアングル
動的治療後に現われたブラックトライアングル

初診時に比べてむし歯や歯周病のリスクは減少し口腔衛生状態は改善しました。リスクの減少としては、叢生が改善されたことで歯の磨き残しが減り、歯肉からの出血が減り、深い歯周ポケットが減少し、咬合が安定したことで唾液の分泌量が増加し、むし歯の原因となる細菌(SM菌、LB菌)が減少したと考えられました。しかし、動的治療後と初期治療後のデータを比較すると歯と歯の間の磨き残しがあり、歯肉からの出血も増加していることからリテーナー期間中もプロフェッショナルケアとホームケアでさらに口腔内の衛生状態を改善し健康な状態にしていく必要があると考えます。

動的治療前後のう蝕リスクの変化

動的治療前後のう蝕リスクの変化

動的治療前後の歯周病リスクの変化

動的治療前後の詳細な変化

※レーダーチャートは中心に向かうほどリスクが減少していることを表しています

動的治療前後の詳細な変化

動的治療前後の詳細な変化

動的治療前後の細菌の変化

動的治療前後の細菌の変化

考察

本症例は、以前のひるま矯正歯科ではむし歯や歯周病のリスクを減少させることはできなかったと思われる症例です。
なぜなら以前は、唾液検査や歯周組織検査をおこなわずリスクを把握していなかったこと、初期治療やメインテナンスをおこなう一般歯科医師、衛生士がいないためにリスクのコントロールができなかったからです。患者さんの歯並びを単に綺麗にするだけではなく健康な状態にするためには、矯正歯科治療だけでなく一般歯科医、衛生士によるチームアプローチの必要性を改めて確認できた症例でした。

中立咬合、叢生、両突、右側偏位顎 治療前後 写真1

中立咬合、叢生、両突、右側偏位顎 治療前後 写真2

中立咬合、叢生、両突、右側偏位顎 治療前後 写真3

中立咬合、叢生、両突、右側偏位顎 治療前後 写真4

中立咬合、叢生、両突、右側偏位顎 治療前後 写真5


BACK

永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安

治療内容
オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
治療に用る主な装置
マルチブラケット装置、症状により歯科矯正用アンカースクリューを用いる場合もあります。
費用(自費診療)
約1,280,400円~1,472,900円(税込)
※検査料、月1回の管理料等を含む総額
通院回数/治療期間
毎月1回/24か月~30か月+保定
副作用・リスク
矯正装置を初めて装着後は、歯を動かす力によって痛みや違和感が出たり、噛み合わせが不安定になることで顎の痛みを感じる場合があります。
歯を動かす際に歯の根が吸収して短くなる、歯ぐきが下がる場合があります。
治療中は歯みがきが難しい部分があるため、お口の中の清掃性が悪くなってむし歯・歯周病のリスクが高くなる場合があります。
歯を動かし終わった後に保定装置(リテーナー)の使用が不十分であった場合、矯正歯科治療前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。 ・
長期に安定した歯並び・噛み合わせを創り出すために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。