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症例紹介15/Kさん「上顎前突、叢生」

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Kさん「上顎前突、叢生」

初診時の診断:「上顎前突、叢生」

今回は富山県の寺田矯正歯科医院で治療を開始され、東京の大学入学と同時に当院に転医された男性のKさんです。
当院の矯正歯科治療は、新潟大学矯正歯科のスタンダードエッジワイズテクニックを用いて治療をおこなっており、同じ医局出身の大先輩歯科医院寺田先生からの転医であったため特に大きな問題もなく治療を継続できた症例です。
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■初診時

現症および主訴

歯並び(上の歯が前に出ていること)を気にされて矯正治療による改善を希望されました。初診時18歳。

※以下より画像をクリックすると大きい画像が見れます。

顔貌所見

顔貌

骨格的に上下顎骨の前後的なズレが大きく、下顎は後退し軽度の上下口唇突出感を認めます。口唇が鼻尖とオトガイを結ぶEラインを超えています。

口腔内所見

上下顎歯列の前後的な位置関係に大きなズレがあり上顎歯列に対して下顎歯列が後方に位置する大臼歯関係Angle class II、上下顎前歯部に軽度の叢生、上顎前歯部にスペースを認めました。右上2番は口蓋側(内側)に転位しているため、切縁が斜めに咬耗していました。

 治療前 上顎

 治療前 右側 治療前 正面 治療前 左側

 治療前 下顎

特記事項

全身的な疾患や顎関節症などはありませんでした。上下顎左右側には第3大臼歯(親知らず)が埋伏していました。

▲埋伏している親知らず
埋伏している親知らず

■ 寺田矯正歯科での治療方針

検査の結果から、上下歯列の前後的な位置関係を改善して叢生を改善するために上顎のみ第1小臼歯(左右上4番)を抜歯して叢生および咬合関係の改善をおこない、臼歯関係はAngle class II仕上げを目標として矯正治療を開始しました。

■ 寺田矯正歯科での動的治療開始時口腔内写真

動的治療開始

寺田矯正歯科での動的治療開始時 右側寺田矯正歯科での動的治療開始時 正面寺田矯正歯科での動的治療開始時 左側

■ 当院転医時

当院への転医は、動的治療開始から約12ヵ月後、犬歯の遠心移動終了時でした。治療方針や装置などに変更の必要はないため、そのまま治療を継続しました。経過の治療方針としては、第二大臼歯のコントロールおよび前歯の後退による空隙の閉鎖、緊密な咬合の獲得です。

当院転医後の動的治療開始時 右側当院転医後の動的治療開始時 正面当院転医後の動的治療開始時 左側

■ 治療結果

動的治療期間

動的治療期間は約37ヵ月でした。予定の治療期間は明記されていませんでしたが一般的には30ヵ月前後で動的治療が終了すると思われる症例ですので治療期間としてはやや長くなってしまいました。

顔貌所見

顔貌

上下顎前歯が後退したことでEラインの内側に口唇が入り、口唇の突出感および口唇閉鎖時の緊張感が減少し、オトガイ部が明瞭になり良好な側貌を得ることができました。

口腔内所見

叢生、上下顎前歯の唇側傾斜は改善され、上下顎の全ての歯が効率よく接触する安定した咬合を得ることができました。 右上2番は術前の咬耗により切縁が斜めになっています。臼歯関係はAngle class IIで仕上げました。

治療後 上顎

治療後 右側治療後 正面治療後 左側

治療後 下顎

X線写真所見

パノラマX線写真所見では、治療途中にブラケットポジションの変更などをおこないましたが歯軸の平行化に不十分な点も認められましたが歯槽骨や歯根の吸収は認められませんでした。親知らずは完全な萌出が困難であると考え、保定期間中に抜歯することとしました

X線写真

セファロX線写真の重ね合わせにより上下顎前歯が後退し、口唇の突出感、緊張感が改善し、側貌における硬組織と軟組織のバランスが改善したことを確認できました。

セファロ重ね合わせ

■ 考察

本症例は、上下歯列の前後的なズレが大きく、口唇の突出感もあるため、大臼歯のアンカレッジコントロールや前歯の後退量から口唇の後退量を予測する必要があります。また、上下で仕上がりの歯牙本数が異なるため歯のサイズが合いにくく、治療の仕上げに繊細さが要求され矯正歯科的には難症例であると言えます。このような症例をきちんと治療するためには知識や経験が豊富な専門医の元で治療を開始し継続的な治療をおこない完了することが理想的です。一方で、患者さんの様々なライフステージで転居が必要となることは少なくなく、同じ矯正歯科医院に通い続けることが難しい場合もあるでしょう。このような場合でもきちんとした診断により治療が開始されていて、適切な紹介先の選択などがおこなわれれば治療結果に大きな悪影響を与えずに済みます。

本症例は、寺田矯正歯科の治療方針が適切で資料もきちんと揃っており転医の際の連絡も丁寧におこなっていただけたので転医の受け入れ先である当院としても不安なく治療を継続することができました。その結果として、治療の質を落とさず、患者さんにも不安を与えず治療を終えることができましたので転医症例としては理想的な結果を得ることができました。私たち矯正歯科医はこのような連携をおこないながら患者さんに負担をかけないように日々努力して治療をおこなっています。

当院ではどのような患者さんでも転医の受け入れをおこなっていますが、治療開始時の方針が不適切な医院からの転医は治療を全てやり直さなければならなくなることもあり、その頻度は少なくありません。皆さんも矯正治療を開始される場合は転医の可能性も含めて検討され、経験豊富な矯正歯科専門医の元で治療を開始することをお勧めします。


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永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安

治療内容
オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
治療に用る主な装置
マルチブラケット装置、症状により歯科矯正用アンカースクリューを用いる場合もあります。
費用(自費診療)
約1,280,400円~1,472,900円(税込)
※検査料、月1回の管理料等を含む総額
通院回数/治療期間
毎月1回/24か月~30か月+保定
副作用・リスク
矯正装置を初めて装着後は、歯を動かす力によって痛みや違和感が出たり、噛み合わせが不安定になることで顎の痛みを感じる場合があります。
歯を動かす際に歯の根が吸収して短くなる、歯ぐきが下がる場合があります。
治療中は歯みがきが難しい部分があるため、お口の中の清掃性が悪くなってむし歯・歯周病のリスクが高くなる場合があります。
歯を動かし終わった後に保定装置(リテーナー)の使用が不十分であった場合、矯正歯科治療前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。 ・
長期に安定した歯並び・噛み合わせを創り出すために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。