最善の治療を考える日々…妥協はしない やるっきゃない!
2013年、一年かけて山形県酒田市の日吉歯科でオーラルフィジシャンについて学ばれたそうですが、いかがでしたか?
2006年にオーラルフィジシャン(OP)を学んでいた院長より、熊谷崇先生の指導を直接受けたほうがいいと勧められて勉強させていただくことしました。熊谷先生に、メインテナンスを中心に行う治療について学ぶとともに、実際に治療している資料を持参して発表し、指導を受けるというもの。初診からメインテナンスまで、どのような流れで行っているか、どのような治療をしたかを発表するのですが、いくつもの症例を提出しなければならないことや宿題のレベルが高いことのほか、学んだことを実践しているかを厳しく確認されるので本当に大変でした。
指導のなかに施設面の確認もあって、一日の来院患者数とユニットの台数などを確認されました。しっかり患者さんに説明しながら治療できる環境が整っていることもメインテナンス医院には重要なことなんです。当院は院長がすでに改善済みだったのでその点での指摘は受けませんでしたが、今後も矯正歯科でメインテナンスをやっていくのかという質問はありました。ひるま矯正歯科は2015年、OPひるま歯科 矯正歯科として新たなスタートを切ったわけですが、ひるま矯正歯科の将来について相談し始めたのはこの頃だったかもしれませんね。
直未先生自身は、矯正歯科からOP歯科へ変わることについて、どのようにお考えでしたか。
OPについて理解を深めたあと、スウェーデンのマルメ大学で予防歯科先進国の医療を学びました。でもその頃はまだ矯正治療開始前に初期治療としてお口の中の状態を改善し、メインテナンスの大切さを伝えるという形で、私は院長の指示のもと、むし歯や歯周病の治療を行っていました。それがOP歯科に変わるということは、一般歯科医である私が治療の中心となって、矯正治療が必要な場合は院長に治療を依頼し、メインテナンスについては衛生士に指示をする、むし歯があれば私が治療をしますが、より専門性の高い治療は専門医に依頼する、というように仕事の流れがガラッと変わることになります。私のように治療の中心となる人をゲートキーパーと呼ぶのですが、院長からこのゲートキーパーの打診があったときは、正直言って泣きました(笑)。OPや予防歯科について学んできたのですが、それが現実になるということは私にとっては本当に大きな変化でしたね。でも最終的には院長をはじめ医院のスタッフが協力してくれるから大丈夫、「やるっきゃない!!」と自分を奮い立たせて(笑)決心しました。
歯科医を目指した頃、今の自分は想像していましたか。
まるでしていませんでした(笑)。私の実家は、父が歯科医で専業主婦だった母が父の歯科を手伝っていました。私も手伝いをするなかで、もっと役に立つにはどうしたらいいかな、自分も歯科医になったらもっと手伝えるようになると考えて勉強をし始めたのです。もともと自分が前に出て何かをするという性格ではなく、誰かを手伝いたい、それにはどうしたらいいかと考えて動くタイプでした。それなのにゲートキーパー…(笑)! 本当に思ってもみませんでしたね。でもやると決めたからには絶対に頑張ろうと思いました。スタッフも戸惑うことがあったと思いますが、わからないことやできないことを隠さず伝えることにしたんです。こうしたいけどできないから手伝ってと言うと、みんな力を貸してくれるんです。本当にありがたいですね。一緒に働いている仲間が助けてくれるということは大きな自信になりました。
現在はOPひるま歯科 矯正歯科以外でも治療されていますね。
スウェーデンのマルメ大学で同じ時期に学んだ西東京市にあるアップルデンタルセンターの畑慎太郎院長先生から、OP歯科に変わるにあたりいろいろなアドバイスをもらっていたんです。ゲートキーパーの役割や考え方なども相談すると、じゃあ僕が教えますと言ってくださって勉強会が始まりました。今は月に2回、畑院長先生の診療を見学させてもらい、治療について学ぶほか、治療方針の立て方や患者さんへの説明の仕方などを勉強しています。他医院の診療を見学する機会って普通はほとんどないことなのでありがたいですね。
それと、立川病院口腔外科に月2回。こちらは当院でできないような大きな手術や、親知らずの難しい抜歯などを行います。当院の患者さん以外の方も治療をするのですが、ときどき口腔がんなどの重い病気を発見することもあります。むし歯の治療で来院されても舌の裏などの異変を見逃さないことも歯科医の大事な治療のひとつだと思っています。
直未先生は双子のお母さんでもありますが、仕事との両立はどうされていますか。
子供たちが小さいころは育児に専念して、2歳になったときに仕事をしたいと思って保育園に入れて父の歯科を手伝い始めました。その後、ひるま矯正歯科で週に3日、一般歯科治療を担当するようになって、子供が大きくなるに従って勤務日を増やしていって…今に至る(笑)。OPセミナーもそうですが、海外セミナーもドイツ、スウェーデン、アメリカと行っていて、長期にわたるときの子供たちの世話は、主人の母に泊まりに来てもらったり、私の実家に預けてお願いしたりしていました。皆に協力してもらえるから仕事ができるんだと思って、本当に感謝しています。子供たちはもう進路を考える時期で、2人とも歯科医になると言っています。私たちのような考え方の歯科はお金持ちにはなれないよ!と、散々やめたほうがいいと話していたんですが(笑)、どうしてもなりたいみたいで一所懸命勉強しています。仕事と母親業はうまく両立できないこともあったと思いますが、母親業ができるのもあと少しなので、がんばってやっています。
将来の目標はありますか。
「やるっきゃない!!」から始まりましたが、今は楽しいですね。やりたいことをやれている充実感があります。でも楽しい分、悔しい思いもするし反省も多いです。患者さんに大切なことがうまく伝わらなかったと感じたときが一番かな。ひとりひとりに最善の治療を考えて伝えるのは難しいことだなと痛感しています。やっぱり早く削って治して、と言われることもありますし。でも絶対に妥協せず伝え続ける、今はこれをしっかりやっていくことですね。ひとつずつ積み上げたことが将来につながっていけばいいなと思っています。