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ドキュメンタリー矯正治療 / ステップ28

矯正装置の除去と保定装置の装着

今回のドキュメンタリー矯正治療では、いよいよ歯を動かす治療を終える(リムーブ)とリテーナーの装着についてご説明します。
ブラケットとバンドの除去方法、上顎の取り外し式のリテーナー、下顎の固定式リテーナーについて解説をおこないます。

ブラケットの除去

現在の矯正治療の主流はマルチブラケットボンディングシステム(マルチブラケット)と言うものです。これは、マルチ(複数)のブラケットを直接歯に接着(ボンディング)して歯を動かす矯正治療システムを意味します。

マルチブラケットでは、歯を動かすためのしっかりとした矯正力を加えてもブラケットが歯面から外れない接着剤を用いなければなりません。
その一方で、歯を動かし終わったら歯を傷つけずにブラケットを外すことができる接着剤が必要です。

ひるま矯正歯科では、歯の根の先の病気を治療する歯根端切除術等に用いるために開発されたスーパーボンドという接着剤を使用し、ブラケットを歯にボンディングしています。

スーパーボンドは、歯とブラケットをしっかりと接着してくれる一方、歯の表面のエナメル質より柔らかい性質を持っています。そのため、もし歯の表面に接着剤が残って接着剤を削り取らなくてはいけなくても、歯より柔らかい材質の切削器具を使用することが可能で。歯を傷つけずにブラケットを除去することが可能です。

では、具体的にブラケットを除去する手順を説明します。

金属製のブラケットは丈夫で、変形することはあっても割れることはありません。そこで、ブラケットのウイング部分にワイヤーを引っ掛けて引っ張ることでブラケットを外すことが可能です。

矢印方向に引っ張りブラケットを除去

丸で囲まれた部分を歯面に当てながらウイングにかけたワイヤーを矢印方向に引っ張ることでブラケットを除去します。

ボンディング材が歯面に残っている状態


ブラケットが歯面から引き離され、ボンディング材が歯面に残っていることがわかります。

プラスチックのブラケットは、金属のブラケットに比べて壊れやすく、ブラケットを除去する際に部分的に引っ張っても粉々になってしまいブラケットを一塊として除去することはできません。そこでプラスチックのブラケットを外す時はブラケットのベースと歯面の間に爪状になっているプライヤーの先を楔のように入れて歯面からブラケット引き離していくことでブラケットを除去します。

プライヤーを使用し、ブラケットの除去


ブラケットと歯面の間に爪状のプライヤーの尖端を楔の様に入れていくことでブラケットを除去します。

ブラケットを外した後も歯面にはボンディング材が残ります。
ボンディング材をひっかき剥がすことのできるプライヤーで大部分のボンディング材を取り除き、最終的に残った細かいボンディング材はスチールバーと呼ばれる金属のバーで削り落とします。

この時、ボンディング材はスチールバーよりも柔らかく、スチールバーは歯の表面のエナメル質よりも柔らかいため、歯を傷つけずにボンディング材だけ削り落とすことが可能になるのです。

ボンディング材が歯面に残っている


ブラケットを外した後に、ボンディング材が、歯面に残っています。

ボンディング材をスチールバーで除去


歯面に残ったボンディング材を尖端が丸いスチールバーで除去している所。

バンドの除去

前歯、犬歯、小臼歯はボンディング(接着剤)によりブラケットを装着しますが、大臼歯には金属のベルトにワイヤーを通すチューブを蝋着したバンドをセメントで固定して用います。大臼歯は前歯や小臼歯に比べ2~4倍の噛む力が加わるので矯正装置が外れやすいためです。

また、矯正治療中にバンドが外れた状態のままでいるとバンドの下にプラーク(細菌の塊)が溜まり、むし歯などになってしまいます。

ひるま矯正歯科では、バンドを装着する際に虫歯予防の効果があるフッ素をゆっくり放出する性質(フッ素徐放性)としっかりと固定できる性質を持つグラスアイオノマーセメントでバンドを装着します。
グラスアイオノマーセメントは、むし歯等の治療で詰めたり被せたりするインレーやクラウンを装着する際にも用いる歯科用セメントです。

バンドを取り除く時は、バンド除去専用のプライヤーを使用します。
てこの作用を利用して、バンドを歯面から除去します。
バンドを外しても歯面にセメントが残るため、セメントを超音波スケーラーなどで取り除きます。

ブラケットとバンドが外れると全体の歯を研磨して、歯に付着した着色などを取り除きます。また、ブラケットやバンドの陰に隠れて付着していた歯石なども取り除きます。

バンドに当ててバンドを歯面から除去


こちらの部分を歯面に当てて支点とします。


こちらの部分をバンドに当ててバンドを歯面から除去します。

バンドが歯面から除去され浮き上がった状態


バンドが歯面から除去され浮き上がった状態。

バンドが除去された状態


バンドが除去された状態。

除去されたバンドとブラケット

除去されたバンドとブラケット

歯面にボンディング材やセメントが残っている状態

バンドとブラケットが除去され
歯面にボンディング材やセメントが残っている状態

歯面にボンディング材やセメントを超音波スケーラーで取り除き、ブラシなどで歯面を研磨する

歯面にボンディング材やセメントを超音波スケーラーで取り除き、
ブラシなどで歯面を研磨する

ボンディング材やセメントが除去され歯面が研磨された状態

ボンディング材やセメントが除去され歯面が研磨された状態

リテーナーの装着

上下の装置の除去が完了し歯面の研磨が終了したら、リテーナーのセットです。

ひるま矯正歯科では主に上顎は取り外し式のベッグタイプリテーナー、下顎は接着材で歯の裏側に装着するFSWリテーナーを用います。

ドキュメンタリー矯正治療の症例では、上下顎前歯にすき間がありました。初診時にすき間がある症例では、矯正治療後にすき間が戻りやすい特徴があります。そこで上顎前歯部にもすき間の戻りにくい固定式のFSWリテーナーを用いました。
したがって、上顎はベッグタイプリテーナーとFSWリテーナーの併用、下顎はFSWリテーナーを使用しました。

上顎前歯に装着されたFSWタイプリテーナーと上顎に装着されたベッグタイプリテーナー


上顎前歯に装着されたFSWタイプリテーナー。


上顎に装着されたベッグタイプリテーナー。

下顎前歯に装着されたFSWタイプリテーナー


下顎前歯に装着されたFSWタイプリテーナー。

リテーナーを装着した状態を正面から見たところ

リテーナーを装着した状態を正面から見たところ

*下顎は前歯の裏側にFSWタイプリテーナーを装着しているので、
表側からリテーナーが見えません

リテーナーを装着した状態を右側から見たところ

リテーナーを装着した状態を右側から見たところ

リテーナーを装着した状態を左側から見たところ

リテーナーを装着した状態を左側から見たところ

Dr.ヤスアキのほっと一息

ひるまだより16号」にドキュメンタリー矯正治療を受けた本人(当院衛生士)の感想が掲載されています。
本人の感想の中にもありましたが、下顎前歯のブラケット除去を始めとして矯正装置の除去は痛みが強いようです。もう少し外しやすい接着剤やセメントであればあまり力を加えず装置を外せるので痛みをより軽減することが可能であると思います。しかし外しやすい接着剤やセメントは、治療中にも外れやすくなるというデメリットがあります。

特に歯根のコントロール(トルクコントロール)や歯の捻転のコントロールをする際はアーチワイヤーとブラケットをきつめにタイイングし緩みがないようにしなければコントロールできません。せっかくきつくタイイングしたブラケットが次回の診察までに外れていると歯は動かないことになってしまいます。外しやすい接着剤やセメントを用いると治療が長期化したり、治療の仕上がりが悪くなることがあるのです。

一方で、矯正装置と歯が強くくっつき過ぎていて、歯を削らなければ装置を除去できない様な接着剤では、矯正装置を除去する際に歯を傷つけてしまいます。

そこで、色々な材料を使用してきた経験から、動的治療中は外れにくく、外した際に、歯を傷つけない接着剤としてスーパーボンドやグラスアイオノマーセメントが使いやすいと考えています。

この様な接着剤やセメントを使っても痛みを最小限にしてリムーブする方法は、最小限の力でブラケットやバンドを外すことだと考えます。最小限の力で外すにはコツや経験に加えて、慎重にリムーブをおこなうことが重要です。
リムーブは少々辛いかもしれませんが、治療の質を維持するために御理解頂ければ嬉しく思います。


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永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安

治療内容
オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
治療に用る主な装置
マルチブラケット装置、症状により歯科矯正用アンカースクリューを用いる場合もあります。
費用(自費診療)
約1,280,400円~1,472,900円(税込)
※検査料、月1回の管理料等を含む総額
通院回数/治療期間
毎月1回/24か月~30か月+保定
副作用・リスク
矯正装置を初めて装着後は、歯を動かす力によって痛みや違和感が出たり、噛み合わせが不安定になることで顎の痛みを感じる場合があります。
歯を動かす際に歯の根が吸収して短くなる、歯ぐきが下がる場合があります。
治療中は歯みがきが難しい部分があるため、お口の中の清掃性が悪くなってむし歯・歯周病のリスクが高くなる場合があります。
歯を動かし終わった後に保定装置(リテーナー)の使用が不十分であった場合、矯正歯科治療前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。 ・
長期に安定した歯並び・噛み合わせを創り出すために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。