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ドキュメンタリー矯正治療 / ステップ35

保定終了から完了まで

今回のドキュメンタリー矯正治療では、保定終了から矯正治療完了について報告します。通常の矯正治療は、保定期間の終了を持って完了となり、その後は、むし歯や歯周病の予防を中心としたメンテナンスプログラム(デンタルドック)でおこなっています。

保定期間の終了と完了

保定期間の終了時に再度矯正歯科的な検査、むし歯と歯周病のリスク検査をおこないます。保定開始時より噛み合せは安定しているのか、コントロールされたむし歯や歯周病のリスクが低いままで現在も維持できているか、固定式の保定装置の周りに新たなう蝕や歯周病の進行はないかなどを調べます。そして、患者さんとカウンセリングをおこない、むし歯と歯周病のリスクを認めた場合には再度リスクを減少させるための初期治療をおこないます。そして、全ての問題が改善して、保定装置を除去して歯並びや噛み合せが安定していることを確認して矯正治療は完了となります。

保定期間終了時の矯正歯科的な検査

X線写真を撮影し、初診時、動的治療終了時と比較して、どのような変化があり安定しているかを確認します。

セファロX線写真
セファロX線写真

セファロの重ね合わせ(黒:初診、赤:リムーブ時、緑:保定期間終了時)
セファロの重ね合わせ(黒:初診、赤:リムーブ時、緑:保定期間終了時)

上顎骨、下顎骨の部分的な重ね合わせと側貌における口元の重ね合わせ
上顎骨、下顎骨の部分的な重ね合わせと側貌における口元の重ね合わせ

パノラマX線写真
パノラマX線写真

パノラマX線写真
デンタルX線写真

初診時の正貌変化 動的治療終了時の正貌変化 保定期間終了時の正貌変化
初診時→動的治療終了時→保定期間終了時の正貌変化

初診時の側貌変化 動的治療終了時の側貌変化 保定期間終了時の側貌変化
初診時→動的治療終了時→保定期間終了時の側貌変化

初診時の口腔内変化 動的治療終了時の口腔内変化 保定期間終了時の口腔内変化
初診時の口腔内変化 動的治療終了時の口腔内変化 保定期間終了時の口腔内変化
初診時の口腔内変化 動的治療終了時の口腔内変化 保定期間終了時の口腔内変化
初診時の口腔内変化 動的治療終了時の口腔内変化 保定期間終了時の口腔内変化
初診時の口腔内変化 動的治療終了時の口腔内変化 保定期間終了時の口腔内変化
初診時→動的治療終了時→保定期間終了時の口腔内変化

むし歯と歯周病のリスク検査

歯周基本検査結果
歯周基本検査結果

カリエスリスクレーダーチャート
カリエスリスクレーダーチャート

歯周病リスクレーダーチャート
歯周病リスクレーダーチャート

矯正治療完了時の染め出し写真 写真1 矯正治療完了時の染め出し写真 写真2 矯正治療完了時の染め出し写真 写真3
矯正治療完了時の染め出し写真 写真4 矯正治療完了時の染め出し写真 写真5
矯正治療完了時の染め出し写真

保定期間終了時の考察

セファロの重ね合わせを見ると、動的治療終了時を示す赤いラインと保定期間終了時を示す緑色のラインに大きなズレがないことから、動的治療終了から保定期間終了までの間に後退させた前歯や口元の突出感は、後戻りを起こすような予想外の変化は起きておらず安定している状態であると考えられました。

口腔内では前回のドキュメンタリー矯正治療で考察したように、ディスクルージョンしていた大臼歯は挺出し、より噛みやすくなるような変化を認めました。また、大臼歯だけでなく上下の歯が全体的にしっかりと噛めるような変化も認めます。遠心部分のスペースは保定期間中に現われてしまったものの、その後はスペースが広がることはなく安定していました。

むし歯と歯周病のリスクを示すカリエスリスクレーダーチャート、歯周病リスクレーダーチャートともに動的治療終了時(点線)よりリスクは減少し、保定期間を通じてむし歯と歯周病によりなりにくい口腔内環境へ変化してきたことが確認できました。

完了後のメンテナンス

保定期間終了時検査の後は、検査結果に基づきリスクがあればブラッシング指導、歯石除去、PMTCなどをおこなっていきます。そして、リスクが改善されて矯正歯科治療は完了となります。

しかし、歯は矯正装置を装着していなくても口腔内の力のバランスが変化すれば自然に動くので、矯正治療が完了しても噛み合せは変化する可能性があります。

その主な原因は、むし歯による歯の喪失、歯周病による歯を支える骨(歯槽骨)の喪失により歯が傾いたり、噛む力のバランスが変化してグラグラしてくるからです。したがって、矯正治療で綺麗になった歯と歯並びを守るために、完了後もむし歯と歯周病予防のメンテナンスは必要です。

そこで、ひるま矯正歯科では完了後のメンテナンスを一般の歯科医院に依頼するか、当院でメンテナンスのみ継続するかを患者さんに選択していただき、当院を希望された場合は生涯にわたり患者さんの口腔内の健康を維持するメンテナンスを継続しています。

せっかく矯正治療をしたのにメンテナンスに通わなければならないのかと考えるかもしれませんが、矯正治療後のメンテナンスは矯正治療を始める前の歯並びが悪い状態に比べて、1回のメンテナンスにかける時間を短くできたり、メンテナンスのために2~3か月に1度通わなければならない所を3~12か月に1度通えば良くなることで患者さんの負担が少なくなるのです。

矯正治療完了後、歯の磨き残しが多い患者さんの例 写真1 矯正治療完了後、歯の磨き残しが多い患者さんの例 写真2 矯正治療完了後、歯の磨き残しが多い患者さんの例 写真3
矯正治療が完了しているにもかかわらず歯の磨き残しが多い患者さんの例

本症例は、当院のスタッフ(歯科衛生士)でしたが当院を退職したためメンテナンスは他院でおこなうこととなり、完了の検査の際に認めた上下顎固定式保定装置周囲に付着した歯石や、歯の汚れ(バイオフィルム)をスケーリングやPMTCにより除去し、僅かなリスクを改善した状態で矯正治療は完了としました。

以上、矯正治療の完了を持って「ドキュメンタリー矯正治療」を完了致します。長い間の応援をありがとうございました。

今後も多くの方に矯正治療の素晴らしさを正しく理解していただくための新たな企画を計画中です。皆さんお楽しみに!

矯正治療は、その患者さんの口腔内に新しい歯並びと噛み合せを創造する治療です。そして、その歯並びと噛み合せが患者さんにとって良いものかどうかを短期間で客観的に評価することは、初診時の状態が個々の症例によって大きく異なるためとても難しいものです。

本当に良い矯正治療とは動的矯正治療が終わり、保定期間中に徐々にしっかり噛めるようになり、保定装置を除去しても長期に渡り安定すること、メンテナンスしやすい歯並びにより歯周病やむし歯になりにくい歯並びです。そして、この様な歯並びこそ本当に美しい歯並びと言えるでしょう。

私たちひるま矯正歯科の考える美しい歯並びは、ドキュメンタリー矯正治療を通して皆さんに表現できたでしょうか。
これからもひるま矯正歯科は本当の美しい歯並びを目指して努力を続けます。


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症例写真の補足情報

主訴
上顎正中離開の存在により歯を出して笑えない
診断名
中立咬合、空隙歯列、下突顎
年齢
21歳6か月
抜歯部位
下顎第3大臼歯
治療期間
27カ月

永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安

治療内容
オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
治療に用る主な装置
マルチブラケット装置、症状により歯科矯正用アンカースクリューを用いる場合もあります。
費用(自費診療)
約1,280,400円~1,472,900円(税込)
※検査料、月1回の管理料等を含む総額
通院回数/治療期間
毎月1回/24か月~30か月+保定
副作用・リスク
矯正装置を初めて装着後は、歯を動かす力によって痛みや違和感が出たり、噛み合わせが不安定になることで顎の痛みを感じる場合があります。
歯を動かす際に歯の根が吸収して短くなる、歯ぐきが下がる場合があります。
治療中は歯みがきが難しい部分があるため、お口の中の清掃性が悪くなってむし歯・歯周病のリスクが高くなる場合があります。
歯を動かし終わった後に保定装置(リテーナー)の使用が不十分であった場合、矯正歯科治療前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。 ・
長期に安定した歯並び・噛み合わせを創り出すために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。