矯正治療中の歯みがきについて
矯正治療が始まるとお口の中の環境は大きく変わります。
ひるま矯正歯科の矯正治療では、細かい所まできちんと噛ませるようにコントロールしなければならないので、主に固定式の矯正装置を使います。
今回のドキュメンタリー矯正治療も、固定式の装置を使っています。この固定式の装置は、患者さんが自由に取り外しをできないため、歯みがきが非常にしづらくなります。
また、矯正治療をおこなう患者さんは当然ながら『歯ならびが悪い』はずです。
その悪い歯ならびに、固定式の矯正装置(ブラケット、ワイヤー、バンドなど)が装着されるので歯みがきがとても大変になります。
歯みがきがきちんとできないと、むし歯や歯周病になってしまいます。
すると、せっかく矯正治療で歯ならびが綺麗になっても、今度はむし歯や歯周病の治療をしなくてはなりません。
ですから、矯正治療中の歯みがきはとても大切なのです。
そこで今回は、矯正治療中の歯みがきについてお話したいと思います。
なぜ歯みがきをしなければいけないの?
日本人の90%は、一日に1度以上歯を磨きます。
オフィスビルの女性用化粧室では、お昼休みの後、歯みがきで混雑してしまうという記事を見たことがあります。それぐらい歯みがきは多くの人の習慣となっているのです。
多くの方が歯みがきの重要性を感じていると思いますが、『なぜ歯みがきをしなければならないのか』については、あまりきちんと理解されていないのではないでしょうか?
そこで歯みがきをしなければならない理由についてお話ししたいと思います。
歯みがきをしなければならない理由、それは《むし歯と歯周病から歯を守るには歯みがきするしか無い》からです。
むし歯や歯周病の原因は、お口の中に住んでいる細菌による細菌感染症です。
しかし、この細菌をお薬などで完全に取り除き、お口の中を無菌状態にすることはできません。
そして、この病気の元となる細菌は、人が食事をとって栄養をとるのと同じように、毎日の食事から栄養をとり、細菌は数を増やし続け、私たちの歯を攻撃してきます。
ですから、人は食事をとり続ける限り、細菌に栄養を与えてしまうことになるのです。
また、少ない数の細菌なら、唾液や血液に含まれる自分のカラダを守るための細胞(免疫担当細胞)により、やっつけてしまえます。
しかし、歯についた食べカスをみがき残すと、その場所で細菌の数が増え、バイオフィルム(プラーク)という細菌にとって快適な住み家をつくってしまいます。
バイオフィルムの中は、私たちの免疫力は及ばず、細菌は活発になり、歯を溶かす酸や歯肉を腫れさせる毒素をどんどん出します。そして、私たちの歯をむし歯や歯周病にしてしまうのです。
このバイオフィルムは一度できてしまうと歯みがきだけでは取り除くことができません。
そこで、食べカスを取り除き、細菌の住み家であるバイオフィルムをつくらない、大きくさせない最良の方法が、毎日の"歯みがき"なのです。
矯正治療中の歯みがきが難しいのはなぜ?
歯みがきをしなければならない理由がおわかり頂けたかと思います。
では、矯正治療中の歯ブラシが難しいのはなぜでしょうか?
理由は大きく分けて二つあります。
1つ目は、矯正装置によって、歯ブラシの届きにくい所ができてしまうためです。
2つ目は、矯正装置によって、歯の表面に着いた食べカスを取り除く唾液の流れが、変わってしまうからです。
矯正装置には、ワイヤーをブラケットに結びつけるために細かな溝やくびれ、歯を動かすための細いワイヤーがあります。そのため装置の裏側には歯ブラシが届きにくくなる場所ができてしまいます。そして、この様な場所には唾液の流れも届きにくくなります。
では、どんな所が最も"歯のみがき残し"をしやすいのでしょうか?
矯正治療中に磨き残しをしやすい代表的な場所を挙げていきます。
- ブラケットと歯肉の間
- ブラケットの周囲
- ワイヤーの裏側
- 歯と歯のすき間
そして、患者さん個人個人の特性や、歯の大きさ、形態によっても違いがあります。
例えば・・・
- 右利きの人は左側の歯をみがくのが苦手ですので、左側に磨き残しが多くなります。
- 唾液の量が元々少ない人は、唾液により自然に歯を綺麗にすることができないため、より磨き残しの部位が多くなります。
- 大きな歯では、ブラケットと歯肉のすき間が広いため磨きやすく小さな歯では磨きにくくなります。
では、ドキュメンタリー矯正治療の主人公はどのくらいのみがき残しがあるのでしょうか?この写真は、装置を装着して1か月後の磨き残しを撮影したものです。装置が装着される前は、ほぼ完璧にみがけていました。
矯正治療開始前の歯のみがき残しを染め出してみました。
さすがは歯みがきのプロフェッショナル、殆どみがき残しはありません。
装置が装着されて1か月後です。あまり汚れていないように見えますが・・・
ワイヤーを外して染め出しをしてみるとこれだけみがき残しがあります。
汚れた所を確認してもらい、歯ブラシとタフトブラシを使うとこれくらいキレイになります。
症例写真の補足情報
- 主訴
- 上顎正中離開の存在により歯を出して笑えない
- 診断名
- 中立咬合、空隙歯列、下突顎
- 年齢
- 21歳6か月
- 抜歯部位
- 下顎第3大臼歯
- 治療期間
- 27カ月
永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安
- 治療内容
- オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
- 治療に用る主な装置
- マルチブラケット装置、症状により歯科矯正用アンカースクリューを用いる場合もあります。
- 費用(自費診療)
- 約1,280,400円~1,472,900円(税込)
※検査料、月1回の管理料等を含む総額 - 通院回数/治療期間
- 毎月1回/24か月~30か月+保定
- 副作用・リスク
- 矯正装置を初めて装着後は、歯を動かす力によって痛みや違和感が出たり、噛み合わせが不安定になることで顎の痛みを感じる場合があります。
歯を動かす際に歯の根が吸収して短くなる、歯ぐきが下がる場合があります。
治療中は歯みがきが難しい部分があるため、お口の中の清掃性が悪くなってむし歯・歯周病のリスクが高くなる場合があります。
歯を動かし終わった後に保定装置(リテーナー)の使用が不十分であった場合、矯正歯科治療前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。 ・
長期に安定した歯並び・噛み合わせを創り出すために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。