矯正治療前後の比較と分析
今回のドキュメンタリー矯正治療では、矯正治療開始前の資料とリムーブ後の資料を比較します。
一般的な学会や研究会での症例発表の流れに準じて治療開始前(初診時)を黒字、リムーブ時を赤字で表示します。
顔写真の比較
顔写真や口元の写真の比較では、主に治療前後の軟組織比較をおこないます。本症例では、正貌(正面顔貌)所見において初診時より明らかな左右非対称性などを認めませんでしたが、リムーブ時も同様に明らかな左右非対称性を認めず良好なバランスが維持されていると思われます。初診時に比べリムーブ時は輪郭がややほっそりしていますが、これは矯正治療の影響ではなく全身的な変化(体重の減少など)によるものと思われます。
初診時正貌
リムーブ時正貌
スマイル時の明らかな軟組織変化は認めませんが、上顎前歯部の正中離開が閉鎖されたことにより審美性が向上したと思われます。
初診時正面顔貌(スマイル)
リムーブ時正面顔貌(スマイル)
45°から側貌の写真にかけて口唇の突出感が改善されたと思われます。
初診時斜位45°顔貌
リムーブ時斜位45°顔貌
初診時側貌
リムーブ時側貌
口元アップ写真でも初診時に比べリムーブ時に口唇の突出感は改善しているように思われます。
初診時口元アップ
(口唇閉鎖時)
リムーブ時口元アップ
(口唇閉鎖時)
初診時口元アップ
(口唇リラックス時)
リムーブ時口元アップ
(口唇リラックス時)
スマイル時のアップ写真では前歯が後退し、空隙が閉鎖したことで口唇の突出感が改善され審美的にも向上していると思われます。
初診時スマイル右45°
リムーブ時スマイル右45°
初診時スマイル正面
リムーブ時スマイル正面
初診時スマイル左45°
リムーブ時スマイル左45°
口腔内写真の比較
口腔内写真では、歯列全体のスペースが閉鎖されたことがよく分かります。上顎、下顎の口腔内写真から歯の捻じれ(特に上顎犬歯)が改善されて歯列弓の連続性が保たれ左右対称のアーチ型に変化したことが分かります。また、スペースの閉鎖により、上下顎歯列弓の前後的な長さが短くなり唇側傾斜していた上下顎前歯がコントロールされたことが分かります。
初診時口腔内写真(正面)
リムーブ時口腔内写真(正面)
初診時口腔内写真(右)
リムーブ時口腔内写真(右)
初診時口腔内写真(左)
リムーブ時口腔内写真(左)
初診時口腔内写真(上顎)
リムーブ時口腔内写真(上顎)
初診時口腔内写真(下顎)
リムーブ時口腔内写真(下顎)
症例写真の補足情報
- 主訴
- 上顎正中離開の存在により歯を出して笑えない
- 診断名
- 中立咬合、空隙歯列、下突顎
- 年齢
- 21歳6か月
- 抜歯部位
- 下顎第3大臼歯
- 治療期間
- 27カ月
永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安
- 治療内容
- オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
- 治療に用る主な装置
- マルチブラケット装置、症状により歯科矯正用アンカースクリューを用いる場合もあります。
- 費用(自費診療)
- 約1,280,400円~1,472,900円(税込)
※検査料、月1回の管理料等を含む総額 - 通院回数/治療期間
- 毎月1回/24か月~30か月+保定
- 副作用・リスク
- 矯正装置を初めて装着後は、歯を動かす力によって痛みや違和感が出たり、噛み合わせが不安定になることで顎の痛みを感じる場合があります。
歯を動かす際に歯の根が吸収して短くなる、歯ぐきが下がる場合があります。
治療中は歯みがきが難しい部分があるため、お口の中の清掃性が悪くなってむし歯・歯周病のリスクが高くなる場合があります。
歯を動かし終わった後に保定装置(リテーナー)の使用が不十分であった場合、矯正歯科治療前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。 ・
長期に安定した歯並び・噛み合わせを創り出すために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。